作品情報
放射能汚染をテーマに、主人公の数奇な運命を描いた本作は、映画企画として発表されたまま封印され、ファンの間では幻の作品とされてきたものです。
原子力発電所が爆発し、臨界事故が続発するようになった世界では
放射能汚染による精子の減少と劣悪化が深刻な問題となっていた。
有料精子保有者である「種馬」の精子は民間の精子バンクが高額で買い上げ、
その一家には一生遊んで暮らせる大金が転がり込んで来る。
一方で、第二次性徴期を迎えても生殖器が大きくならず、
セックスのできない不幸な子供たちは「小便小僧」と呼ばれていた。
高校を卒業し、警備保障会社に就職をした小便小僧のウマソーは、市長の娘に恋をした罰として、
使用済みの核燃料や放射能廃棄物で溢れる、廃炉になった原発を警備することになる。
やがてウマソーの性器は徐々に失われ…。
人々が原子力を選んだ結果、生まれてしまった世界。
ただ、それでも紡がなければならない未来がある—。
全編を通して岩井美学に貫かれた、豊饒なエンターテインメント!
著:岩井俊二
解説:金原瑞人
ページ数:272ページ
判型・造本・装丁:文庫判